Yamada Takayuki News - 山田孝之

Friday, December 23, 2005

「同じ競技者」の視線から-障害者スポーツ描くフジ系「スタートライン」

「人生に自信持ってもらえたら」 制作の栗原氏

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撮影では、主演の山田孝之(右から7人目)や鈴木杏(同5人目)ら役者陣と、鈴木徹選手(同6人目)らアスリートとの交流も生まれた

 障害者スポーツをテーマにしたドラマ「スタートライン~涙のスプリンター~」が、17日午後9時からフジテレビ系で放送される。障害者と健常者を、同じアスリートとしてとらえた作品で、心の絆(きずな)の大切さを描いている。(井上晋治)

 物語は、オリンピック出場を有力視されながら、突然の難病で夢を断たれた元スプリンター・駿(山田孝之)と、盲目のアスリートの少女・瞳(鈴木 杏)の出会いから始まる。競技に挫折した駿と、伴走者(ガイド)もなく、パラリンピックの短距離走競技出場に前向きになれない瞳。2人の心は葛藤(かっと う)を繰り返しながら、新たな人生のスタートラインに向けて一つになっていく。

 原作は、フジテレビの栗原美和子プロデューサーが「原夏美」のペンネームで4月に出版した小説。昨年、アテネパラリンピックを観戦した栗原プロ デューサーは、「義足のアスリートはかっこよかった。選手とガイドの仲むつまじい姿に感動して、以前からドラマ化を考えていた」という。

 ドラマは、日本障害者スポーツ協会と日本パラリンピック委員会の推薦作品で、陸上競技など延べ30人の選手がエキストラで出演している。同協会によると、現在、国内では陸上競技だけで約600人が選手として活動している。

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「鈴木徹選手(右)は、スターの素質がある」と話す栗原美和子プロデューサー(左)

 同協会の中島武範・常務理事(69)は、「さまざまなルールがある障害者スポーツを、お茶の間の多くの人に知ってもらえるのはありがたい。自分に 自信が持てず、人前に出るのを嫌がる障害者も数多くいるので、(ドラマを見て)そうした人も、自分も何かやれるという気分になれるのでは」と期待する。

 走り高跳びのアテネパラリンピック代表・鈴木徹選手も、実はそんな一人だった。山梨県出身の鈴木選手は、高校時代、ハンドボールで国体3位の実績 を持つ。しかし、筑波大学に推薦入学する直前の1999年2月、車の事故で右足ひざ下を失った。鈴木選手は、「落ち込みもしたけど、事故は自分の責任。ハ ンドボールをまたやりたかった」と、再起をかけ、義足を付けてリハビリに励んだ。

 翌2000年、義足走行の練習中に「たまたまやってみた」走り高跳びで、持ち前の高い瞬発力を発揮。それからわずか約半年間で、シドニーパラリンピックに選手として出場を果たすまでになった。アテネ後は、健常者の大会にも出場しながら、「北京」をめざしている。

 初めての演技では、練習中の選手役で高跳びを披露した。「ロケ中、出番が急に回ってくるのに驚いた。格好悪いから、失敗しないように気をつけまし た。これまで、障害者のドラマは障害を克服する物語が多かったけど、今回はアスリートとして見てもらえるのがうれしい」と笑顔で語っていた。

 栗原プロデューサーは、「健常者から障害者になった人には、昔の自分を忘れられず、自信を持てずにいる人もいる。そうした障害者の人たちがドラマを見て、これからの人生に自信を持ってもらえたら」と話している。

2005年12月14日 Yomiuri