Yamada Takayuki News - 山田孝之

Friday, November 03, 2006

映画:「手紙」、きょう全国公開

 毎日新聞日曜版「日曜くらぶ」に連載された、東野圭吾さんの小説が原作の「手紙」が3日、全国で公開される。兄が殺人を犯して服役中であるため に、仕事にも恋愛にも挫折する弟。加害者の家族というだけで差別を受けなくてはならないのか、罪を償うとはどういうことか。重い問いかけの中に、罪の重さ に気づく兄と、家族と新たな人生を歩き出す弟の姿を感動的に描き出す。兄弟を演じた玉山鉄二さんと山田孝之さんに、映画について語ってもらった。【戸澤美 佐、勝田友巳】

 ◇罪を償うとは、どういうことなのか--兄・剛志役、玉山鉄二さん

 両親を早くに亡くした剛志は、出来のいい弟の直貴を大学に進学させようと懸命に働いてきた。しかし体を壊し思うにまかせず、学費を手に入れようと 家に押し入って家人を殺してしまう。深く罪を悔いながら、直貴との文通を心の支えに刑に服している--。この役を演じて、自身も影響を受けたという。

 「ニュースの見方が変わりました。事件や事故は、多くの人には人ごと。この役で加害者の目線で事件を追って、自分とつながっていると気づいたんで す。被害者と加害者は、常に背中合わせ。罪を償うとはどういうことか。服役すれば遺族への償いになるのか。それは加害者の自己満足かもしれない。差別を受 ける家族など、周りの人への影響も含めて償わなければならないのではないか。映画は答えを出していないけれど、考えさせられました」

 演技の上では、刑務所の中で作業をしたり手紙を書いたりと、セリフも動きも少ない。服役者役のために、頭を丸め体重を落として撮影に臨んだ。

 「自分のモチベーションのコントロールが難しかったですね。精神的につらい役で、プライベートでリセットせず引きずりたかった。一度玉山鉄二に 戻ってしまうと、剛志になるのが大変だと思ったので。剛志は生き方が不器用なんだと思う。犯罪者だけど極悪人ではなく、かわいそうだと救いの手を差し伸べ たくなるようなキャラクターにしようと気をつけました」

 直貴は差別と向き合って生きていくために、剛志にとってはつらい決断をすることになる。剛志は人を殺したことの報いを、深く悟る。ラストシーンは厳しいが、未来への一筋の希望も託している。

 「優しさのつもりでしていたことが、周りを傷つけていた。気づいた剛志はショックだったと思う。人を殺し、さらに周囲も傷つけ、もう何をしたらよ いのかテンパッてしまっただろう。ボタンのかけ違いが、兄弟の間でも起きていた。すごく切ないことだと思う。でも、最後の直貴とのやり取りで、光をもらっ たような感じがしました。この映画は、何でも吸収できる若い子に見てもらいたい。多くの人に思いを伝えられる立場でいる限り、見ている人が考えるきっかけ になる作品に出られればと、思うようになりました」

 いちずなまなざし、言葉を探しながら真摯(しんし)な口調で語る。役に深く入り込み、剛志を生きた手応えを感じていたようだ。

 ◇直貴の心の葛藤を、常に頭で考えていた--弟・直貴役、山田孝之さん

 この世で唯一の家族であり大好きな兄が、自分のために強盗殺人を犯してしまう。だが、事件を境に弟・直貴の人生も大きく揺らいでいく。テレビドラ マ「白夜行」に続き、東野圭吾作品に主演した山田孝之は「犯罪者の弟」という、どうすることも出来ない差別に苦悩する青年を演じた。

 「直貴は、兄のせいで芸人になる夢も愛する人との結婚も駄目になる。撮影中は、そのシーンが幸せな気分だろうが悲しい気分だろうが、直貴の葛藤(かっとう)を常に頭で考えるようにしていました。根本の部分をしっかり持って、後は場の空気と相手役の出方に任せました」

 生野慈朗監督は、山田にほとんど何も言わなかった。俳優として一任されたやりがいと共に、客観的に見て自分の演技は大丈夫なのかという不安もあった。

 「僕が持つ暗さは直貴と重なる部分があり、それを素直に出せれば良いと監督は考えていたみたいですね。でも、役者って自分の役のことばかりで、せりふの間も直貴はこうだと決めて演じてますが、ほかの役者さんと絡んで失敗したらそれは僕の責任ですから心配もしました」

 直貴が勤務する家電量販店で窃盗事件が起こり、直貴は倉庫担当に配置転換させられる。そこで、杉浦直樹が演じた会社会長と語り合う。この場面は映画の重要なテーマを伝える印象的なものになった。

 「差別のない所に逃げるのではなく君はここで生きていくんだと、杉浦さんに言われ、胸に響きました。このセリフが映画の中に存在することがすてきだと思う。親しい人でも言えないことを他人が言ってくれる。すごいやさしさですよね」

 役を通して見たり考えたりすることで、一つ一つ知識を蓄えているという。今作「手紙」のストーリーも最初はリアルに感じることができなかった。

 「今はこれがリアルな世の中だと受け止めています。嫌な面もあるが直貴を包んでくれる温かい人たちだっている。加害者の立場からのニュースは少な いし、こういう人たちがいて、こういう現実があることを、多くの人に知ってもらいたい。ラストで直貴は少しだけ強くなるんですが、差別は変わらないし、 闘っていかなくてはならない。完全なハッピーエンドではないけれど、僕はこれから先の彼の人生に思いをはせました」

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原作   :東野圭吾「手紙」(毎日新聞社・文春文庫刊)

監督   :生野慈朗

出演   :山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカ、吹石一恵、尾上寛之、吹越満、風間杜夫、杉浦直樹

脚本   :安倍照雄、清水友佳子

音楽   :佐藤直紀

挿入歌  :小田和正「言葉にできない」

主題歌  :高橋瞳「コ・モ・レ・ビ」

特別協力 :日本郵政公社

製作委員会:ギャガ・コミュニケーションズ、日活、葵プロモーション、毎日新聞社、S・D・P、レントラックジャパン、ソニー・ミュージックエンタテインメント、東急レクリエーション

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 ■人物略歴

 ◇たまやま・てつじ

 1980年4月7日生まれ。99年ドラマ「ナオミ」で俳優デビュー。「ROCKERS」「天国の本屋~恋火~」など映画に次々と出演。05年「逆境ナイン」で初主演した。ドラマ「ブラザー☆ビート」で人気を得た。

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 ■人物略歴

 ◇やまだ・たかゆき

 1983年10月20日生まれ。99年デビュー。「ウォーターボーイズ」「世界の中心で、愛をさけぶ」「タイヨウのうた」など話題のテレビドラマに数多く出演している。映画は「電車男」(05年)。陰のある若者役など繊細な演技には定評がある。

毎日新聞 2006年11月3日 東京朝刊

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