山田孝之の演技がニューヨーク・アジア映画祭でアメリカ人にも好評価!ニューヨークで新作『ミロクローゼ』を語る
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2011年7月7日 6時13分
山田孝之の演技がニューヨーク・アジア映画祭でアメリカ人にも好評価!ニューヨークで新作『ミロクローゼ』を語る
ニューヨーク・アジア映画祭(N.Y.A.F.F)での山田孝之
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[シネマトゥデイ映画ニュース] テレビドラマ「タイヨウのうた」や「白夜行」、映画では『電車男』や『十三人の刺客』などで活躍してきた山田孝之が、現在開かれているニューヨーク・アジア映画祭(N.Y.A.F.F)のオープニング作品『ミロクローゼ(原題)/ Milocrorze』と過去の作品について語った。
山田孝之出演映画『アンフェア the answer』場面写真
同作は、失恋した男が自分を捨てた女を追って時空をさすらう3部構成のラブ・ファンタジー作品になっている。監督は、マネキン人形の短編ドラマ「OH!Mikey オー!マイキー」で知られる石橋義正が務めている。そして今回、山田孝之はオレンジ色のおかっぱ頭の外国人のオブレネリ・ブレネリギャー、浪人のタモン、愛の伝道師の熊谷ベッソンの3役に挑戦している。
山田は制作前に、この映画の監督石橋義正が結成した映像パフォーマンス・グループ、「キュピキュピ」の映像や短編作品「OH!Mikey オー!マイキー」を観たそうで「『OH!Mikey オー!マイキー』は(出演を依頼される前に)観たことがありました。今回、この仕事に参加すると決まってからは、資料として(キュピキュピの)DVDを頂けたので、それを観させていただきました」と明かした。キュピキュピの映像を観た山田は「なんだこれは? 変態だなぁと思いましたね(笑)。だからこそ、楽しみでしたね。現場に入って、早く演出を受けてみたいと思いましたね」と石橋監督の斬新さに惹(ひ)かれたようだ。
山田孝之は15歳から俳優の仕事を始め、これまで俳優として自分探しをしてきた中で、自分に足りないものがあると感じたことがあるという。「人としては、ほとんど足りていませんね(笑)。僕には俳優を通しての自分探しということはなくて、芝居をする上でやっている作業があるんです。例えば1か月間撮影するとしたら、その1か月間は自分という存在を否定するんです。(自分の)すべてが間違っているとね。それは、僕が今まで27年間生きてきた中で、親から受けた教育や学校で友達と知り合った学生時代の生活、仕事を始めてなど、その27年間でいろいろな人たちとしゃべって身につけた感性とか感覚、それらをすべてを否定するんです。そして、そのときに出演する作品の役、今回だったらオブレネリ・ブレネリギャーという役柄が脚本の中で言っているせりふや行動のみが、すべてその期間の僕にとっては正解になるんです」と個性的な演技アプローチを話してくれた後、「それでも、やっぱりこれまで生きてきて、なぜこの環境でこの役はこんなせりふが出るんだろうとか思うことはもちろんありますよ。ただ、そう思ったときにこれが(役柄が)正解で、そう思った僕が間違っていると言い聞かせるんです」と自問自答しながら役をつくり込んでいくことを明かした。観客は映画の中で、見事に3役を演じ分けた山田の才能に驚嘆せずにはいられないだろう。
今回の撮影では、それぞれ役柄ごとに撮影をするという手法をとったようで、「まず、オブレネリ・ブレネリギャーの役を2週間で撮って、終わった次の日から熊谷ベッソン役に入ったんです。ただ最後のタモンの役は、準備に時間が掛かると言われたんです。だから、前者の2役を春に撮って、それから空いたその期間に、僕は2本の映画に出演しました。そして10月にようやく最後のタモン役を撮ったんですよ」と述べ、それぞれの役柄にじっくり邁進できる環境であったと語った。
これまでテレビや映画で活躍してきた山田孝之だが、舞台への興味については、「そうですね、参加したことがなくて、周りの友達からも『舞台をやらないの?』とよく聞かれるんですよ。今までは、正直そんなに興味がなかったんです。それに実際にオファーも来ていなかったんですよ(笑)。ただ、以前に舞台作品を映画化する作品があって、その原作を作った方から、次にもし舞台をやることがあれば参加してみては? と言われたのですが、映画が先行してしまい、その舞台が再び行われる時期には、残念ながらほかの映画への出演が決まってしまって、結局舞台には参加することは無理でした。ただその当時は、僕はまだ舞台は無理だなぁと思っていたのですが、これから実際にオファーが来たら、やってみたいという気持ちはありますね」と語った。舞台での山田を観られる日はそう遠くはなさそうだ。
また、山田に現在の日本の映画に足りないものは何かと聞いてみると、日本はシナリオ書く人、もとから作る人材がまだまだ足りていないと思っています。さらに、漫画を映画化するというよりは、むしろ映像化しただけの映画があり、それはまるでネタがないかのような作品でもあって、そういうのは意味がありませんね」と客観的な目で日本の映画界を見ていることがわかった。
『十三人の刺客』で共に仕事をした三池監督については、「何より三池組は本当に楽しいんですよ。士気がすごく高いと思います。三池さんを好きな人が集まるんです。役者でもスタッフでも、初めて三池さんと仕事する人たちでも、三池さんと仕事ができるというテンションで来るので、何よりも現場で三池さんがすごく楽しそうなんです。だから、三池さん自身があまりに喜んでモニターを観ていて、カットが掛からない時もあるくらいなんです(笑)。それと、すごく自由に演技をさせてくれます。普通、みんな俳優が自由に演技しているとめちゃくちゃになるのですが、三池監督はそれをちゃんと整えているんですよ。それが僕はすごいと思いましたね」と三池監督は尊敬できる存在であることを教えてくれた。
ニューヨーク・アジア映画祭(N.Y.A.F.F)のオープニング作品に選考された新作『ミロクローゼ(原題)/ Milocrorze』のアメリカ人の反応については、「日本の観客の反応とだいぶ違いますね。海外の人は純粋に映画を楽しみに来ている人が多いと思うんですよ。もちろん、日本の人たちも楽しみに来ている人たちもいますが、日本の人たちはどこか斜めに観ているというか、今日はわざわざ映画に来た、さてどれほどのもの(映画)を見せてくれるのですか? と思っている人が多いと思います。だから、海外では拍手喝采の起きるようなシーンでも、日本ではそんなことないじゃん? と冷めた目線で観ていたりすることがありますね。その点海外は、皆が笑ったり拍手することで、映画が進むにつれて劇場がどんどん温まっていくですよ。だからあの一体感が魅力ですね」とアメリカでも満足できる反応が得られたことを明かした。
将来、ハリウッド進出する願望については、「ハリウッドの映画に対しての出演願望はそんなにないんです。ただ芝居は好きなので、芝居をやるからにはできるだけ多くの人に観て欲しいという気持ちはあるので、ハリウッドだけではなく、韓国や台湾などの海外映画に参加することで、観客の間口を広げるという点では、ぜひ参加してみたいですね」と国際俳優としてへの意欲もみせた。
日本の俳優の中でも群を抜いての存在感を示した山田孝之が、今回3役という全く違った個性を持った役柄に挑戦している。これから、どんな演技を披露してくれるか、楽しみな俳優であることは間違いない。 (取材・文:N.Y.細木信宏/Nobuhiro Hosoki)